2022年10月から雇用保険料率が引き上げられました。
今回の引き上げは、労働者・事業者共に0.2%ずつ負担が増え、引き上げ前の雇用保険料率は0.95%~1.25%から1.35%~1.65%となっています。
普段から節約を頑張っているのに、これではますますお金をためづらくなってしまいますよね。
今回の引き上げによって、私たちの生活に、いったいどのような影響がでてくるのでしょうか?
また、失業した場合、失業保険は多く貰えることになるのでしょうか?
詳しく解説していきます。
「2022年10月」、雇用保険料率引き上げ内容について

雇用保険料率の見直しは毎年行われ、2022年の4月に引き上げの施行があったばかりです。
ただし、4月施行時は事業主の負担だけが引き上げられていたので、労働者に影響が出ることはありませんでした。
今回の引き上げにより、労働者負担は0.3%→0.5%へアップ。
事業主負担は0.6%→0.85%へアップすることになりました。
労働者の雇用保険料の計算方法は以下のとおりです。
雇用保険料=(給与額または賞与額)×(雇用保険料率)
雇用保険料は、受け取る給与や賞与の額によって、金額がかわってきます。
つまり、給与額や賞与額が高ければ高いほど、支払う保険料も比例して高くなるというものです。
引き上げの内容は「雇用保険料」ではなく「雇用保険料率」なので、所得の割合から等しく保険料が徴収されるということになります。
労働者の負担について

今回の引き上げについては、新型コロナウィルスの感染拡大がが大きく影響し、10月施行において事業者・労働者共に料率が0.2%引き上げになりました。
つまり、労働者である私たちが直接的な影響を受けるということになります。
たとえば、月収20万円の会社員であれば、雇用保険料は600円→1000円に増えます。
この差を小さな変化と考えますか?
個人的には、月々の雇用保険料だけで400円もアップすることを考えると、年間で考えてもばかにならない金額だと思ってしまいます。
企業負担について
今回の変更については、事業主負担も引き上げられています。
2022年4月の時点でも引き上げられており、1年で2度の引き上げということになります。
前年度から考えると、合計で0.025%の引き上げなので、従業員が多い事業主にとっても大きな負担になることが考えられます。
このことにより、事業主側は保険料の負担増加を避けるため、雇用保険加入義務のある正規雇用の採用を減らし、フリーランスや短時間労働者ばかりを雇用するようになるかもしれません。
今後、正規雇用での採用はますますハードルが高いものとなりそうです。
雇用保険料率アップの背景として

通常、雇用保険料の変更は4月1日より適用となり、毎年1度の見直しが一般的でしたが、2022年10月の引き上げの背景として、新型コロナウイルスの感染拡大が大きく影響しています。
企業側からすると、従業員を休業させるときの手当てを支払ったり、事業を休業させたりするときに給付される助成金に「雇用調整助成金」があります。
新型コロナウイルスの影響により休業する企業が激増し、それに伴って「雇用調整助成金」を申請する企業が増えました。
また、労働者側からすると職を失った人に対して給付を行う「失業手当」の給付も、新型コロナウイルスの影響により増加しました。
新型コロナウイルスによって業績の悪化・事業縮小を理由に解雇や休業状態による収入減少になった多くの労働者が失業手当の給付を受けている現状があります。
2019年を100とした場合、2021年末には111.5%まで受給者数・申請者数が増加、雇用調整助成金に加えて失業保険の給付増加により、雇用保険の積立金はほとんど底をつく寸前となっており、すぐにでも財源を確保することが求められています。
今回の雇用保険料率の引き上げは、こういった背景を元に決定されたというわけなのです。
参考)新型コロナウイルス感染症関連情報:新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国際比較統計:失業給付受給者数・申請者数|独立行政法人労働政策研究・研究機構
もらえる「失業保険」は増えるのか?

労働者の時に、料率が上がってたくさん保険料を納めていたのだから、失業したらその分返してもらわないと!
と、思ってしまうのは当然のことです。
では、実際のところ失業した際にもらえる「求職者給付」の基本手当に変更はあるのでしょうか。
結論から言うと、答えは「NO」です。
なぜなら、失業保険の受給金額の計算方法は、今回の雇用保険料率とは別の計算方法で算出されるからです。
失業前の6カ月間の給与総額 ÷ 180(日) × 給付率
失業前の6カ月間の給付総額 ÷ 180(日)は「賃金日額」と呼ばれ、一日当たりいくら稼いでいたのかを計算します。
「賃金日額」に「給付率」をかけた金額が「基本手当日額」になります。
「給付率」は、現在45%~80%の率になりますが、離職時の年齢と賃金日額により異なります。
「基本手当日額」の計算方法が変更にならない限り、受け取れる失業保険の金額は変わらないということです。
詳しくは雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和3 年8 月 1 日から~|ハローワークをご覧ください。
「失業保険」とは、正しくは雇用保険制度の中の、「失業等給付」の「求職者給付」にあたります。
雇用保険制度は、「求職者給付」からさらに細分化され、
「一般被保険者に対する求職者給付」
「高年齢被保険者に対する求職者給付」
「短期雇用特例被保険者に対する求職者給付」
「日雇労働者被保険者に対する求職者給付」
に分かれています。
ご自身が当てはまる求職者給付で、条件等に当てはまれば給付金を受け取れるという仕組みです。
詳しくは、雇用保険制度の概要|ハローワークをご覧ください。
私たちの生活への影響は?

実際のところ、雇用保険料率の引き上げが行われると私たち労働者への影響はどのようなことが考えられるのでしょうか?
②正社員雇用が減る可能性がある
【受け取れる給与額が減る】
当然のことながら、保険料がアップするとその分手取り額が減ります。
最近では最低賃金の見直しは毎年のように行われていますが、「雇用保険率」がアップしているということは、その分比例して徴収額も増えているということです。
結局、労働者である私たちの手元に残る賃金は増えていないということです。
さらに、現在では社会保険料率の引き上げも行われているため、ますます賃金アップの実感はわかなくなっているという現状にあります。
【正社員雇用が減る可能性がある】
雇用保険料率の引き上げにより、労働者だけではなく企業側の負担んも大きくなっています。
企業側は労働者を雇用保険を加入させる要件として、
「1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがある従業員」
に雇用保険加入義務が発生します。
つまり、この要件を満たさないと雇用保険に加入させなくてもよいということになります。
具体的には、週20時間未満で働く短時間労働者やフリーランスを多く雇い、雇用保険に加入させない方法で従業員を雇い入れ、正社員の数を減らしていくという対策がとられるる可能性が考えられるということです。
こういった、企業側からの対策により雇用の機会が減ることを考えると、労働者である私たちにとって、正社員雇用のハードルは高くなっていることはもちろんのこと、一つの企業に雇われ続けるリスクも考えて、働き方について改めて考えていく必要があるのかもしれません。
まとめ

今回は、雇用保険料率引き上げについて解説をしました。
新型コロナウイルスは私たちの健康を脅かすだけでなく、給付金の増加による財政圧迫ももたらし、雇用保険の積立金は底をつく寸前までをも引き起こしています。
そのようなことから、今回の雇用保険料率引き上げの措置は、やむを得ない対応だったのかもしれません。
今後も雇用保険料が上がり続けることが予想されますし、加えて社会保険料の引き上げも視野に入れておかなければなりません。
これから起こりえるさまざまなリスクを少しでも回避できるよう、自分たちなりに働き方やワークライフバランスを見直していく時なのかもしれません。
毎日の節約はもちろんのこと、もう少しお金のことを真剣に考えてみても良いかもしれませんね。
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