おひとりさまの生活は自由で楽しい反面、老後の心配がどうしてもつきまといます。
一人で安心して暮らしていくために、老後資金はいくらくらいあればよいのでしょうか。また老後の資金や資産を増やすためにはどうするのがよいのでしょうか。
今回は、今後増え続ける「おひとりさま」の老後を豊かに迎えるために、必要最低限必要な資金と、今から出来る資産の増やし方をご紹介します。
「おひとりさま」老後の現状

内閣府の調査によると一人暮らしの高齢者は2020年には男性約243万人、女性約459万人。高齢者人口に占める割合は男性が15.5%、女性が22.4%となり、今後もさらに増加していくことが予想されます。
高齢者女性の一人暮らしは、男性に比べ2倍以上も多いことがわかります。
これは、現在も進む高齢化はもちろん、核家族世帯が多いことや女性の方が寿命が長いということも関係しているといえるでしょう。
高齢者の一人暮らしの場合、特に女性においては、経済的に困窮するケースが多くあります。
一人暮らしの高齢女性のうち、実に4分の1が120万円未満の低所得層です
(参考:内閣府男女共同参画局)
男性に比べると正規雇用の割合が低く、職歴から安定した仕事を見つられないことなどが理由としてあげられます。
また、男性に比べ一旦仕事をリタイアすると再就職が難しく、老後も収入的に苦しいという人の割合が多いのが現状です。
今後、ますます年金受給額が減少する可能性もあり、人生100年時代を見据えた対策を今から考えていく必要があります。
「おひとりさま」が老後に必要な資金

女性の平均寿命は年々伸び続けていますが、仮に85歳まで生きる場合必要な老後資金はどのくらいになるのでしょうか。
老後25年間で計算すると、約2,550万円が不足すると見込まれます。
では、なぜそのような金額になるのか、内訳を見ていきましょう。
「おひとりさま」の平均消費支出額
老後資金は住んでいる地域の物価や、「持ち家」か「賃貸」かによっても差があるため一概には言えませんが、総務省統計局による家計調査報告のデータによると、2020年における高齢単身無職世帯(世帯主が65歳以上の単身無職世帯)の消費支出の平均額は150,509円となります。
この費用の内訳は食費や毎月の光熱費など生活していくうえで最低限欠かせない費用に加え、医療費や交通費も含まれています。
それに対して、おひとりさま無職世帯の主な収入源は、90%が公的年金です。
国民年金が月当たり約6.5万円支払われると仮定する場合(国民年金(老齢基礎年金(満額)令和3年度月額を参考)、毎月約8.6万円不足となります。
(出展:令和3年4月分(6月15日(火曜)支払分)からの年金額)
(出展:家計調査年報(家計収支編)2020年Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支 総務所統計局)
国民年金 8.6円 × 12カ月 = (1年)780,000円
平均支出約 15万円 × 12カ月 = (1年)1800,000円
差額 102万円 × 25年 = 不足金額25,500,000円
単身世帯 | |
食料 | 41,373円 |
住居 | 20,950円 |
光熱・水道 | 11,687円 |
家具・家事用品 | 5,393円 |
被服及び履物 | 4,910円 |
保健医療 | 7,129円 |
交通・通信 | 18,310円 |
教育 | 2円 |
教養娯楽 | 15,867円 |
その他の消費支出 | 24,888円 |
合計 | 150,509円 |
上記では、収入を国民年金のみに絞って計算しましたが、
一般的な会社員として考えると、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた約146,000円が平均的な年金額となっています。
(出展:令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況)
しかし、女性の場合は男性よりも収入が低いケースが多く、実際にもらえる額は平均額よりも少ない人がほとんどでしょう。
仮にもらえる金額を13万円と見積もった場合、消費支出から差し引くと約2万円の不足となります。
老後25年間で計算すると、最低でも、約600万円が不足すると見込まれます。
国年・厚年 13万円 × 12カ月 = (1年)1,560,000円
平均支出約 15万円 × 12カ月 = (1年)1800,000円
差額 24万円 × 25年 = 不足金額6,000,000円
上記で計算した金額は、あくまでも最低ラインの生活を送った場合のシュミレーションです。
個々人によってさまざまなケースが考えられることですが、老後も余裕のある生活を送りたいという人は、さらに多めに準備しておく必要があります。
老後のために今から出来る資産の増やし方

おひとりさまの場合は、老後に起こりうるさまざまなリスクに備えておく必要があります。
誰もが迎える老後生活のために、今から出来る資産の増やし方をご紹介します。
ポイントは、「貯める」「稼ぐ」「増やす」の3つです。
【貯める】生活基準を低くする

今は会社員として普通に働けていて、収入もそこそこあれば、何も考えずほしいものを買ったり、おいしいものを食べたり、旅行に行ったり出来ているかもしれません。
それがダメというわけではありませんが、現役時代と比べ、老後はどうしても使えるお金が少なくなってしまいます。
そのため、今のうちから「生活レベルを上げない」ことをおすすめします。
消費のクセというものは、歳をとって収入が下がったとしても、そう簡単に変えられるものではありません。若いころから生活コストの高い人は、老後破産する傾向がとても高いのです。
ブランドものには目がなかったり、食事は外食ばかり、ローンでの支払いが多いなどの生活は、老後の生活に経済的な圧迫を与えてきます。
老後のことを考えるなら、今からでもローコストの生活を心がけることが大切です。
【稼ぐ】定年後も就労継続できるようにする

年々定年の年齢が引き上げられたり、定年後も継続して雇用したりする企業が増加しています。
今は「早く仕事を辞めたい」と思われるかもしれませんが、定年後に再就職先を見つけることは本当に大変なことです。
よほどの資産や、貯蓄がある場合を除いて、年金や貯蓄だけで生活するのには限度があります。
できれば、慣れ親しんだ職場で就労継続できることが望ましいですが、それが難しいようなら、早めにハローワークで求人を探したり、手に職をつけて生涯働き続けられる専門性を身に着けることも大切です。
【増やす】資産運用をする

資産運用は今後年金額が下がっていくことを見越して、退職前から効率よく運用をしておくことをおすすめします。
資産運用というと難しいイメージを抱いてしまいますが、きちんとした知識を身に付けながら行えばうまく運用できるようになります。
投資はあくまでも自己責任となりますが、老後に役立つ資産運用の例をご紹介します。
iDeCo(イデコ)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金のことで、定期預金や投資信託、債権などで運用する制度です。iDeCoで積み立てた掛け金は、所得控除の対象となるので、住民税や所得税の節税にもなります。
【iDeCo(イデコ)の特徴】
- 対象年齢 : 20歳以上60歳未満
- 最大期間 : 60歳まで(運用はさらに10年の延長が可能)
- 投資対象 : 株式や債券、リート、金などに投資する投資信託、定期預金など
- 出金 : 60歳までできない
- 節税メリット : 運用で得た利益は非課税
掛け金分は全額が所得控除に
受け取り時にも控除あり - 非課税枠 : 加入する年金により異なる
- 買い替え : 何度でも売買可能(口座にある資産の範囲内)
つみたてNISA
つみたてNISAとは、一定条件を満たしている投資信託の配当・譲渡所得が非課税になる税制優遇制度です。金融庁が定めた対象商品で厳選された商品が多く、毎月少額から一定額を継続的に積み立てられるため、安定的な資産形成に向いています。
【つみたてNISAの特長】
- 対象年齢 : 20歳以上
- 最大期間 : 20年間
- 投資対象 : 投資対象に必ず株式が含まれる投資信託とETF
- 出金 : 自由
- 節税メリット : 運用で得た利益は非課税
- 非課税枠 : 40万円(累計800万円)
- 買い替え : 枠の上限内で可能
つみたてNISAでは年間40万円までの積み立てが可能で、運用によって生じた利益はすべて非課税になります。非課税期間は20年間なので、毎年40万円ずつ投資を始めれば、最大800万円を非課税で運用することができます。
iDeCoでは、拠出限度額(掛金の上限)はお勤め先等により異なり、最大で年間14.4万円~81.6万円の積み立てが可能です。
iDeCoの運用期間は、加入から60歳になるまで(10年間延長可能)なので、加入時期が早いほど非課税での運用を長く続けられます。
投資信託
投資信託とは多くの投資家から集めたお金をひとつの大きな資金にして専門家が運用する金融商品です。
少額から投資することができ、国内外のさまざまな資産へ資産を分散するのでリスクの軽減につながること、個人では難しい投資先にも投資ができることなどがメリットです。
外貨定期預金
外貨預金とは、日本円を外国の通貨へ変換したうえで預金を行うことです。 日本は今、超低金利と言われています。
しかし、世界を見渡せば、金利水準の高い国もあります。
日本円を金利水準の高い国の通貨に換えて定期預金に預けることで、より多くの利息を得られる可能性があります。
まとまった金額で運用をお考えの方や、資産分散をお考えの方などにおススメです。
資産形成について、参考になる書籍はこちらです。
まとめ

たとえ一人暮らしであっても、老後必要最低限の生活を送るためにはある程度の費用が必要です。病気になる可能性や介護が必要になる場合の対策なども考えながら、ご自分のできる範囲で老後資金を少しずつ増やしていきましょう。
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